死者との断絶


なぜ死者と交信出来ないのか……?

相手も忙しい―― 一番大きな理由は、実に当たり前のことです。相手にも都合があるから……はっきりいって、死者と話したがる人の大部分は、実にわがままで強引です。

 考えても見てください。たとえばあなたが外国に旅行したとします。あなたの家族が、その行く先々に何らかの手段を使って電話をしてきたら一体どうなるでしょう。

 出国審査で並んでいれば、電話に出るために列を離れ、飛行機に乗れば荷物を棚に納める間もなく、電話で呼ばれ、食事の際に電話で呼ばれ、トイレの中で電話で呼ばれ、到着の際に忘れ物がないかを確認していれば電話で呼ばれ、入国の審査の列に並んでいれば、電話で呼ばれる。

 挙句のはて、「そちらはどんな様子だ?」と訊ねられても、始終呼ばれて景色を眺めるどころか、必要な手続きに障害が出てくるし、新しい環境に馴染むまで不安なのに、気が散るし、いらいらがつのります。

 それでなくても、今まで肉体に納まっていた時には、相手の思念などには気が付きもしなかった人なら、今まで寂しいくらいに静かな部屋に篭っていたのに、突然何十本もの電話が引かれたかのように、騒音の直中に抛りだされます。(実際には祖先の霊たちが静かな場所に隔離する)

 別れはなるほど哀しいものですが、相手にも新しい世界に適応するための都合があるのです。哀しさでそれを妨げることは決して褒められたことではありません。

 ……え? 死者の直後に交信出来る霊媒がいるだろうって?

 交信の可否は程度ものなのです。煩瑣な交信は迷惑になるということ……それに応じる霊がいるとしたら、特別な事情があるか、または、大抵の場合、なりすましている霊がいるのですよ。

 いずれにせよ、相手の事情を勘案しないで死者と交信したがる人がワガママであるという私の主張は無視出来ないものと思います。


2006-04-14

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