忙しい先祖供養

 数年前に亡くなった叔母から頻繁に墓参りの催促がある。出歩くのは嫌いでないので、都合さえ折り合えば私も割合にマメに墓参に出掛けるが、花を供え、線香に火を灯すと、それでもう用は済んでしまう。お墓にたどり着くまでは、なにやら気を揉む雰囲気が伝わり、おちおちトイレやコンビニにも寄れないのに、終わりはとても味気ない。わざわざ呼び出しておいておきながら妙に淡泊なのだ。

 まあ別段、叔母さんコンプレックスを抱いているわけで無し、墓参の後はそれなりに足を伸ばす先もあるので叔母が淡泊なのは構わないのだが、妙に引っかかる。たいした用事もないのに、何で頻繁に声がかかるのだろう? 

……等と突然疑問に思ったのは、何のことはない。そろそろ寝ようかと思った頃、叔母から線香の催促があったのだ。まあ、線香の香りが決して嫌いではないので、一本火を灯して就寝前の気分を整えてみた。で、その時、ぽっと叔母がいったのだ。

『全くこちらと来たら、日常の用事が無くて、退屈でしょうがない。何日たったのかさえもさっぱり判らなくなる。何か特別の出来事があるわけで無し、何をして良いやら手持ちぶさたでしょうがない。』

……あぁ!?

 催促に応じて墓参しているのに淡泊なわけだ。きっと叔母は、『ああ~退屈。誰か墓参りにでも来ないかなぁ?』ぐらいにしか考えていなかったのだから。

 そっと、私の守護霊に問いかけてみる。

『叔母が退屈そうにしているけど、修行は、はかどっているのかな?』

すると守護霊がこう笑った。

『精神統一が出来なければ次の課程には進めんし、精神統一ばかりやっていたら退屈でしょうがなかろう。ハァハハハ……。』

『いや、ほらさ、遠いご先祖様達がたまには遊びに連れて行くとか?』

笑うというより、ちょっと陽気な貌で守護霊がこう返す。

『それは気配りが足らんかったな。現役・霊媒の親族ということで見物処にはそれなりにコネもある。どれ、時折、物見遊山にでも連れて行って貰えるように稟議しておくか。』

そして真面目な顔でこう続ける。

『もう気がついておろうが……』

うん気がついた。

『昔の人らは、朝晩にご先祖にもご飯を供えたものだが、お前はまあ、出社ギリギリまで寝ているは、翌日に差し支えるほど遅くまで起きているはで、褒められた生活態度でない。自分の生活にメリハリがないから、自ずと祈りも不定期になり、それが近親・祖先が退屈して、祖先の退屈に振り回されるのだ。どうする?』

『どうするといわれたって……手が足りないのだから』

『まあな、先祖供養というのは、大部尾ひれがついていることにようやく気がついただろう? 別段大したことを要求しているわけではないが、毎日のちょっとした気配だけでもずいぶんと喜ばれるものなのだ。』

……ふへぇ。

 別に叔母が迷惑なのではなく、いろいろなものに振り回されている自分を不憫に思う。

『まあ、ボチボチといけ。』……と守護霊が去る。

 ……の筈が、どこからか擬声が聞こえてきた。

『コケ・コッコー』

まあ、楽屋オチなのだが……時を知らせるニワトリ役になれとか? やれやれ。先祖供養は案外、肩の力を抜いても良いらしい。

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