自分に騙される人々

2005年 07月 25日


いいわけを押しつけ合う世界

「私の思いを聞いてほしい!」という声が想念世界の地上辺にあふれている。だが何を聞けというのか? 理想を聞くのは楽しくもある。迎合できるような理想であればなおのこと。希望を持ってこその人間、たとえ卑屈になって生きる人も心中に希望を抱いているが故につらくても生きているものだ。つらいのに希望がなければ命は、火が消えるように、衰え死んでしまう。そういう事例はよく聞くことだ。

 しかし、多くの人が聞かせたがるのは、未来よりも今の話、それどころか過去の話である。だが、誰が何を考えようが、現実は現実である。人が思い、誰かに聞かせようとするのは、大抵が妄想的な自己弁護。「こうなったのは私が悪い訳じゃないんだ!」…… しかし、現実は現実である。

 人は現実と幻想の狭間に立って葛藤する。……暇つぶしにはなる。だが、苦しみ悩むほどの価値が幻想にあるのか? 幻想を楽しむ者が成功をつかむ話は世に多い。クリエイターの仕事とは、多くの場合、他人に幻想を見せることであろう。だが、苦しんで何を得るのか? せいぜいが魂の向上……正しい道を歩いていれば。だが多くの場合は時間の浪費である。

 そもそも幻想が幻想であるゆえんは、どこかに理の合わぬ点があるところだ。合理的であれば、幻想は夢に、夢は現実に変わっていく。だが、理に合わぬ点があれば幻想はいつまでも幻想である。いや、妄想というべきかもしれない。

 人は己の幻想の共有者を欲しがる。共有者がいればそれが現実になると信じて。しかし、誰もが皆、自分だけの幻想を持っている。楽しめる幻想ならばいざ知らず、苦しみや悩みの自分の幻想さえも持て余しているのに他人の幻想にまでつきあうのは大変なことだ。特に苦しみ悩むような幻想の共有は誰もが断りたがるものだ。

…… 社会は、人々の幻想という泥沼の上に浮かんでいる。それをつなぎ止めるべき現実の理解者はいったいどれだけいるのだろうか? 幻想と幻想とを持ち寄って、現実に気がつく者も皆無ではないが、いったいどれがけの人が幻想を直視できるというのだろう?
 

自分に騙される

 ちょっと達観した人であれば、または幻想、いや妄想の果て(現実直視の果てではなく)に光を見いだした人であれば、気がつくことだが……

 世界に幻想があふれ、人々が現実から逃れたがるのであれば……そんな贅沢が許されるのは物質的に豊かな人だけだ…… 人の幻想に同情を示せば、そこに商売が成り立つ。日用品の買い物といったごく現実的な行動の時には、一円でも安く、そして十円ですらも払いたがらぬ人が、幻想の中では湯水のごとく万札を使う。だが、幻想の万札ならばいくら使ってもなくならないが、現実の万札は使える枚数に限界がある。そして他が価値を見いだすのは現実の万札なのである。……この手の商売の中には、合法かつ多くの支持を受ける者と、法律で規制されているものがある。

 他人の悩みにつけ込み、あくどい商売をする人は後を絶たない。違法な商売を肯定する気は毛頭ないが、たとえば戸締まりもせずに出かけた人が泥棒に入られたとしても、なかなか同情できないのと同様、幻想に金を払った人にも私は同情しがたい。

 悪者にだまされた……というのは社会通念上の嘘だ。実際、自分の幻想ですら持て余している人が、どうして他人の幻想につきあう余地があるというのか? 実際は、自分の幻想にだまされているのである。悪者は、自分の幻想を被害者に押しつけているのではなく、被害者の幻想を利用しているのである。だから、自分の幻想をコントロールできなければ、この手の被害は決してなくならない。被害が起きなければ犯罪にならないのだから、悲劇は決してなくならない。

 幻想を楽しむのはよい。だが、苦しみから逃れるために幻想に浸るのは……それで幸せを得た事例をあなたは知っているだろうか?

 間違った道は行き詰まる。その真理から目を背けてはいけない。妄想に執着すれば被害が増えるばかりだ。


 幻想を商売にする人……人々に夢を与える商売をしている人が、往々不幸に転じるのはなぜだろうか。…… 単に人々が他人の不幸ばかりを探しているからなのか、それとも、ミイラ取りがミイラになったということなのか。興味は高まるが、所詮は他人の人生である。


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