長南年恵氏について

2005年 01月 23日


 長南年恵氏についての情報は多いが、おおよその関心は、「祈祷数分で空瓶を薬水で満たす」……という部分であろうか。なるほど、霊魂説(死後の個性存続、または、いわゆる霊媒現象の原因を、死後個性の働きに求める考え方)の有力な証拠資料だ。だが、すでに霊魂説を信じている人間にとって、それがいかなる意義を持つのか?

 奇跡の人ではあるが、奇跡以外の部分が殆ど残されていないのでは、日本心霊研究の看板にはなっても看板以外の意義に乏しい。このような扱いは彼女の人間性を侮蔑する物ではないか。

 むろん、これは実弟・長南雄吉氏の説明上の不備にも問題はあるだろう。雄吉氏による長南年恵伝は、奇跡と天真爛漫さとに重点を置かれているからだ。しかし、どうも日本の心霊研究、もしくは、非霊媒の心霊研究は霊媒の人間性、ひいてはその背後霊団の人間性について、故意に無視を決め込んでいるかのような印象を強く受ける。

 むろん、祈祷数分で薬水を引き寄せるとか、その他の物品引き寄せ現象は、あれば便利だろうなと思う。イヤできることならば収得したいし、その代償として食事をしてはいけないとしても……考慮の余地はある。が、私は見える成果を支える見えざる苦労に注目し、思わず涙ぐみもする。他人事ではないからだ。

続幽魂問答「付録、長南年恵物語」六 霊水忽ち壜中に湧く……サブサイトである、心霊図書館から引用する。

『私は姉が什麼《どんな》ことをして病気を治《なお》すか、一と通り其《その》実況を述べて置きたいと思います。先《》ず驚かれるのは其《その》感応の強烈なことで、患者が玄関に入ったか入らぬ時にモー二階の姉の肉体に当人の病気が感応するのです。 (注ルビタグは使っていません)

……実にさらっと書かれているが、当人の病気が感応するというのは、患者の病痛を共有する……同じ痛みを味わうという意味です。その事は「長南年惠物語補遺(下) 高野氏の報告」の中にさらに具体的な記述がある。

 病人が来ると、年惠様の躯には病人の病苦そのままの苦痛が起りましたので、実に並大抵の苦労ではなかったのです。又物忌《ものいみ》がきびしく年惠様はこれにも絶えず苦《くるし》まれました。心なき人達が汚れた躯でお願いに来ると、その咎を年惠様が引受けて了《しま》うのです。それでも一心に助けを乞う人達を不憫に思われ、厭な顔一つせず、神様に願ってあげるので、いつとはなしに依頼者が集まり少《すくな》き時も数人、多い時は二三十人に及ぶことがありました。

 長南年恵氏は、奇跡に守られて苦労を知らぬ極楽娘ではなく、苦労に負けぬ極楽娘であったのだ。しかも、心掛け一つで感じる必要もない痛みまで、長南年恵氏は黙って受け止めてきたのだという。

 奇跡は神様の受け持ちだ、一方、痛みは霊媒の受け持ちだ。その霊媒の苦労は評価されず、奇跡ばかりが惜しまれる。その運命から長南年恵氏は逃げなかった。……現代にも霊媒能力の持ち主は大勢いるが、苦労から逃げない霊媒は本当に見つけがたいし、霊能力を欲しがるものも多いが、苦労はいらないというものばかりだ。


 私が長南年恵氏について人に語ると、大抵の相手は、奇跡の部分だけを覚えていて、病痛の身代わりについては関心を持っていない。こういう人心の冷淡さをみて、私は時々、もしも彼女が今も地上にいたら、どうしただろう……と、自問自答する。今も人々の苦しみを身代わり続けるのか、それとも、過度の飲酒や喫煙、不摂生な暮らしが生む病気や、努力も忍耐なく嘆き喚く人々の悩みを身代わり続けるのだろうか?……無意味な疑問ではある。

 なお、病人の病痛を肩代わりして直す……というのは、決して長南年恵氏の独占ではなく、割とありふれた話だ。というか、今から見ると、いささか芸のない話で、霊媒が直接痛みをかぶらぬ方法がいくつか案出されている。だからこそ、なおのこと先人の苦労に感極まる思いがする。……ただ苦労することが良いとは思わないが、価値のある苦労は疎かにすべきでないと思う。


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