無い袖は振れぬ(霊感の働き)

2005年 04月 05日


 自分に関する霊感は働きにくいと多くの霊媒はいう。……意地の悪い人向けに釘を刺せば、我身を省みないのは霊媒だけにあてはまる欠点ではない。そもそも自己の洞察に自信を持てなければ霊媒を名乗れぬ訳で、自己の正しさに疑問を抱けば、それが霊感に対する葛藤となって霊感をにぶらせる働きがある。そして、これは主観的な観察ではあるが、霊感に自信を持っている霊媒ほど、自己を省みることを忘れがちで、それがなおさら自分に対する霊感を働きにくくさせるのかも知れない。

 いずれにせよ、霊媒に必要なのは、霊媒能力よりもむしろ自信なのだろうと私は観ずる。霊媒能力が充分に強ければ、自ずと自信が沸上がるという方もいるがそれは机上の空論だろう。

 揚足取り的な事例ではあるが、伊勢方面に心霊仲間と旅行中、空腹を感じて良い食事場所を探せとの要望を受けた、霊査に入るまもなく、『こんな山中で何を期待しているのだ。食べられるだけで幸せに思え』……との通信。当り前なことと一同納得してしまった。

 もうチョット滑稽な事例を紹介すると、師匠の運転手として、入院中の某霊媒をお見舞に訪ねたときのことである。運転中にふっと、病院に行ってはいけない、という気がした。先に自宅に向うか、少なくとも自宅に電話すべきと師匠に進言したが、おそらくは携帯電話を操作するのがイヤだったのだろう……かくいう私は運転中である。

 師匠はお守代りのペンダントを握りしめて精神統一に入る。10秒としないうちに、師匠は「へんねぇ」と言出す。「いま『四階の霊安置室』にいるというのだけど、普通、霊安置室は地下よねぇ」という。そして師に促されるまま、訳の分らぬまま病院を目指すことにする。

 病院に到着後、受付に訊ねるが該当する入院患者はいないという。で、仕方なく自宅に電話をしてみると、同名の病院が他にあり、そちらが入院先であったこと、また、某霊媒は一時退院で自宅におり、今、相談を受けている最中だからチョット遅れて訪ねてくれとのこと…… つまり、病院に行っても会えなかった。だが、まっすぐ自宅に来られても迷惑を掛けた。という事情があったわけだ。こういう複雑な事情は霊査で受信するのは難しい。質問はイエスかノーかで応えられるぐらいに整理しないと確たる答は得難く、複雑になるほど誤解の種が入り込みやすい。さらにいえば、電話で済むことを霊査に頼るのはやはり難しい。で、この時は、「あんたのところの狐にバカされた」と、なぜか私が怒られてしまったが、後日談がある。

 108歳まで生きると断じていた某霊媒は、その後ほどなく亡くなり、既に霊安置室にいる――死ぬ前の準備をしている、という意味において、先の霊査が正しかったと理解された。なぜ4階だったのかには疑問が残るが、それを追究すると屁理屈になるのでやめておく。

 念のために指摘するが、知人、それも親しい友人がもうじき亡くなるという霊査を受けるのは、辛いが故に難しいものだ。私は死期の近づきを感じていたが……108歳、108は人間の煩悩の数で、煩悩がらみの暗喩であって本当の寿命ではないと理解するのが自然だ……素直に受止められたのは、師よりも付合いが浅いからだろう。そして、その時には私の考えを師には告げられなかった。

 結局、真実は扱いが難しい。そして、いつでも答があるとは限らない。暫く待ってみなければ答が生れないことも多いのだ。そして、今無い答を今受取ることは出来ない。

無い袖は振れぬ――無い物ねだりをしているから、何の応えも得られぬのに、「神様なんていやしない、仏様なんていやしない、死後の世界なんてあるはずない、自分には霊感がないし、霊媒なんて嘘つきばかりだ」と物事を否定的にしか考えなければ、たとえどんなものであろうと利用できるはずがない。

 見つからないのは、さがしどころが悪いのだ。……そう思う。


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