本末転倒な原理主義

2005年 02月 25日


 人の表現力には限界があり、人間の理解力にも限界がある。――人と人との関係は、それらの限界の元に成立っている。

 SF作家、アーサー・C・クラーク氏は、小説の中で信仰をこう断じた、「水槽の中の金魚が、毎日エサを与えてくれる者に対して感謝の祈りを捧げているとして、それが人になんの意味があるだろう?」――なるほど金魚の想いの意義は実に迂遠で理解がしがたい。

 では、大人達が幼子の世話をするのはなぜか? 幼子が感謝の祈りを捧げるにせよ、不平不満の泣声ばかりでうるさいとせよ、多くの大人達は、世話する者のない幼子を放置しようとはしない。その行為が報われるにせよ、しないにせよ……それが、人間の持つ「愛」の働きではないか。

 自分の思いを大切にすることこそが純粋と言われる所以である。そして、相手がどう思うかが大切なのではない。――神が存在しないことが合理的に見えても、人の心から信仰を消すことが合理的とはいえない。

 人が神からの愛を期待できないとせよ……仮説としてだ……人が何かに愛を抱いてはいけない理由には成らず、人が何かに愛を期待していけない理由にも成らない。人々が大自然の猛威の中で、幸運を期待するのと同様、神の愛を期待していけない理由がどこにあるというのか、ましてや、神を大自然の働きを支配する法則として捉えるならば、自身と自身の愛する者の無事を思わぬ者がどれだけ居るというのか。つまりは無神論者にしても日常に「神」に祈りを捧げているといえよう。

 ある者はそれを偶然と呼び、ある者はそれを詩的表現をもって「神」と呼ぶ。――人は皆、神に祈る。ただ、それぞれの信条・宗教宗派によって、その神の定義に違いがあるだけのことなのだ。

 神の定義が違うから、互いに相争う。なんと不毛なことだろう! ――人間の表現力には限界があり、人間の理解力に限界がある。そして人は助け合うことで一個人の限界を超えることも出来る。それもまた「愛」が大切とされる所以である。だが、表現力の限界・理解力の限界が争いを生み出すのも現実である。なんのことはない。人間の抱きうる愛には限界があるというだけのことだ。

 互いに違うからこそ助け合う必要があり、又、助け合うことに意義も出る。鉄筋コンクリートや複合素材、様々な企業の異業種提携等々、殊なる者同士が助け合うことで生み出す強さは、誰もが利用していることだ。だが、不明な人々は、異なる者を敵視する。まるで、他を侮蔑することでしか自分の立場を上げられぬがごとく――人を踏みつけにすることしか天に昇れぬ人はまさに哀れなるかな!! 踏みつけるべき人が居なくなったら、更に高みにはあがれなくなるのだから。 傲慢な人ほど依存心が強いということである。

 真の人よ、天の高きを目指す者よ。自己の個性(オリジナリティー)に誇りを抱け、他と比べることなく自身を抱くことの難しさを知るものこそが、人の真の価値を見いだせる人なのだ。

 違うからこそ助け合う――それこそが愛だ。対して同系の者だけを大切にするのは自己愛(ナルシズム)の現れ、生育不良の愛情、いや大人になっても生育不良であればでしかない。かような者は夢幻界で向上の夢を見るのみである。

 人の表現力には限りがあり、人間の理解力には限りがある――教条主義者や原理主義者は、暴力的な言動を以て現実を否定し、そして夢幻界で向上の夢を見るのである。

 地上に於いて山登りが辛いものであるように、死後の向上もやはり辛い。ただ、苦労が報われることを信じる者のみが、向上していくのだ。現実認識の痛みこそが、あなたが確実に天の高みを目指している証である。

 痛む者よ。痛みの中にも希望を手放さぬ者よ、あなたこそが神の愛情が証である。


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