いわゆる「餓鬼」の処置


「良心の試練」掲示板の話題より

心霊相談を始めたばかりの頃、わが師匠は私を馬鹿者呼ばわりしました。まあ、言われるまでもないのですし、その理由については私も十二分に理解していたのです。

浅野和三郎著 「中尾教授の霊能」より、

『即ち人格者というのは自己の欠点の自覚を出発点として精進の道を辿るものであり、非人格者というものは自己の欠点を全然棚に上げ、どこまでも自己慾望の満足に腐心するものであります。ですから最初は両者の間にそう大した懸隔もない筈なのですが、しばらく過ぎてから振り返って見ると実績の上に東西万里の相違が生じてまいります。』

別に私が人格者であると言いたいわけではありません。ただ、「そう努力している」ということが、以下の伏線となるのです。

・・・・・・・

 時折、「私が霊感を得たら世の中の困っている人・霊を懸命に助けるのに」という人がいます。私は微笑で応えますが、本音をいえば、そういう覚悟は、地雷原の上でタップダンスを踊るようなものです。これは経験者……つまり私……が言うのですから間違いがありません。

困っている人・霊は、その原因から二種類に別けられます。一つは他者が原因である場合。この場合は他者の助けが解決の手助けになります。

もう一つは自分自身が原因である場合。この場合の解決は複雑です。

そもそもいかなる論理でわざわざ自分を不幸に追いやるというのでしょう? そんな矛盾に満ちた行為が事実であるとしたら、どうして本気で自分を幸せにしようとするのでしょう? つまり、犯人がわざわざ、自分の犯行を邪魔させるというのでしょうか?

自傷行為というと非論理的ですが、こういう行為は現代に於いてざらに見られることです。たとえば親から虐待、または冷遇を受けている子供は、親に対する愛情ゆえに、それを認められません。そして自分の苦しみの原因を隠そうとします。……霊障、実は犯人をかばっての無意識、かつ幼稚なでっち上げが多いのです。――これは非常に皮肉な話です。なにしろ、こういう場合、その親は、霊障を騒ぐ子供をキチガイ扱いしてしまうからです。つまり、子供は親をかばおうとするのに、親はそれを覆そうとするのですから。

いえ、これは単なる悲劇に終わりません。もしもこの子を助けようとしたらどうなるかを想像してみてください。苦しんでいる子供を救えば、親を責めることになります。自ら苦しみを甘受、いえ、辛受しつつも親をかばっている子供の立場から見れば、その子の苦しみを救う努力は、自分の苦しみよりもさらに耐え難い苦しみを与えることになります。彼・彼女は、必死に抵抗することでしょう。

いえ、念のために申し上げますが、「良心の試練」掲示板の投稿者が親の虐待に苦しんだというのではありません。自傷行為の一つの事例を紹介しただけです。

とにかく、理論的にも、また体験的にも、霊媒には救い得ない相手がいる。救い得ないどころか、救おうと手を出せば、必死の抵抗で火傷をする相手がいることはとても重要です。それはつまり、助けようと努力すればするほど、霊媒にとって自滅行為になるのですから。――困っている人を助ける。その志は立派だと思いますが、それは相手の苦しみを増すことに為りかねないのです。

さて、仏教用語に「餓鬼」と呼ばれる境涯があります。かつて私は餓鬼を、非常に(つまり鬼のように)飢えている霊であると考えました。しかし実体は、鬼のように強欲だから飢えているのです。飢え故にむさぼるのではなく、むさぼる故に飢えているのを、どうやって満たせるというのか……満たすことが必要なのではなく、むさぼるのを止めさせることが必要であることに気がついたのです。つまり、餓鬼に愛を与えても、餓鬼が大勢集まるだけなんです。すると、優しければこそ、餓鬼を助けようとして、餓鬼を集めて、師よりも恐ろしい体験をする霊媒が出てきます。

ですが、自らの優しさを否定して、人は人の心を持ち続けられましょうか。――これは決して論理だけでは割り切れません。


2005年 04月 15日

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